ブレイク・スナイダーのSAVE THE CATを読んだ感想です。
脚本や物語を書く人にとっては非常にメジャーなこのブレイク・スナイダーのSAVE THE CAT。
脚本や物語には構造がある。その構造について分解して説明してくれています。
物語の構造
オープニング、テーマ、セットアップ、きっかけ、ターニングポイント、悩みの時、ラストなどのようなビート(シーンのかたまり)について説明してくれています。
日本でも、「起承転結」や「三幕構成」などのように物語の構造・構成について説明がされていますが、それのハリウッド版とでもいうのでしょうか。
15のビートからなるビートシートがフォーマット
読んでいくとなるほど確かにハリウッド映画は説明されているような構成になっているというのがわかります。
ビートと転換点
ビートシートにはメリハリがあり、ターニングポイント1、ミッドポイント、ターニングポイント2のように重要な節目があることを説明してくれています。
ハリウッド映画でヒットしたものはたいてい説明されている構成になっているようです。
脚本の構成といえばなんといっても思い出すのは第一作目のスターウォーズだと思うのですが、スターウォーズは見事にこのSAVE THE CATの法則にハマります。
黄金の法則
読んでいくと、このSAVE THE CATというのは筆者がおっしゃるように黄金の法則だということがわかります。
下手にこの法則から外して奇をてらってみても、何かちょっとおかしいもどかしさが感じられたりそうです。
しっくり来なくなる作品になったりしてしまうことでしょう。
構造が見えない方が良い
見事に説明され利用価値がありそうですが、
プロならばやはり逆にこうした構成が見えないようにするのが腕の見せ所なのかなといった感想を持ってしまいます。
説明に引用されている映画も、逆に解釈としてこのようなSAVE THE CATに当てはめているように見えるところもあります。
シーンが魅力的だったり出来事が印象的で面白く、こうした構成にまで目が行かないような作品に良い作品が多そうです。
面白いとあまりそうした構成などに目がいかず、次へ次へと興味がいってしまいますので、構成がうまく隠されるのかもしれません。
やはり作るとしたら「こうした基本はきっちり押さえつつ、構造を見えなくするような魅力的なシーンや出来事をちりばめる方が良いのかなと…」そういった感想です。
ビートシートの概要
だいたいの概要だけ説明しますと、
オープニング・イメージ まず初めの段階で作品全体の印象・雰囲気のようなものが示されます。
テーマの提示 そして作品のテーマのようなものを印象づける。
セットアップ そして素早くセットアップを行います。
セットアップとは、いつの時代で、どこで、どのような人たちが、どうなるか?そういった場所や背景を説明します。
きっかけ 物語の場合、「こうこうこういう人がいて、こういうことをやりました。あー良かったです。」このような日記のような作品は誰も見たがりません。
何らかのテーマがあり、登場人物たちがどうにかなることによって、観客の心が動かされなくてはいけません。
したがってたいていは何か問題が起こり、その問題が解決される。もしくは解決されない。そのようなことにならなくてはいけません。
悩みのとき セットアップで説明されたときに、何らかの問題が提示されているはずです。そしてきっかけによってそれが表に出てくる。何かしなければいけない。いやしない。そのような悩みの時が起こります。
第1ターニング・ポイント そして最終的に主人公は何かをやることに決めます。そして新しい段階に入ります。これがターニングポイント1です。
サブプロット・お楽しみ 新しい世界に入った主人公は色々なことをやります。当然何か問題がありその問題の解決のために何かをするわけですが、いろいろな試行錯誤をして行きます。
この部分をブレイクシュナイダーはお楽しみと呼んでいます。
あくまでも観客のためのお楽しみであって主人公が楽しむのではありません。
主人公が色々なことを試行錯誤するのを見て観客が楽しみます。ここは非常に重要で、この部分がある意味作品の売りでもあります。
映画のポスターなどでもこの「お楽しみ」の場面を象徴的に表した絵が使われています。
作品の売りの部分で、「お楽しみ」が観客の気を引くようなものでないと、見てくれない作品になってしまいます。
ミッド・ポイント こうして試行錯誤して行きながらちょうど時間的に真ん中のポイント、ミッドポイントに入ります。ミッドポイントはいわゆる折り返し地点です。
セットアップをして色々なことを説明して行きながら、主人公が試行錯誤して、どんどんと話が発展し拡大して拡散して行きます。
このミッドポイントはちょうど中間点で、今後は話を収束させまとめて行かなくてはいけません。
そうした変換点がミッドポイントで、このポイントでは、「偽りの成功」または「偽りの失敗」そのような場面が置かれます。
試行錯誤していたことがうまくいった。そして最高点に達する。または試行錯誤していたものが結局全然うまくいかず、大失敗に終わってしまった。
そのようなシーンがミッドポイントです。
このミッドポイントから折り返して最終段階へと収束させていきます。出してきた話をこの中間点以降で畳んでいかなくてはいけません。
迫り来る悪い奴ら 中間点で最高によくなった主人公は、そこから段々と悪くなっていきます。いろいろなことがちょっとずつズレてきて、段々とうまく行かなくなっていきます。(大失敗だった場合は良くなっていく。)
段々とうまく行かなくなり、そして敵がだんだんと力を見せ始め、主人公は追い込まれていきます。
すべてを失って そしてすべてを失っての段階で大きな挫折となります。
心の暗闇 すべてを失った主人公がさらに追い込まれ、心の暗闇へと向かいます。すべてを失った主人公が完全に追い込まれ完全な失敗状態となります。そしてどうしてこうなったのかと回想したり反省したりします。
心の暗闇は夜明け前でもあります「夜明け前が一番暗い」などとも申しますが、そのような状態です。
この時に、この状態になるまでの間に何か伏線をいくつか引いておくと思いますが、その伏線がきっかけとなって展開が開けます。
第2ターニング・ポイント そして希望が見えてきます。これが第2のターニングポイントです。
第2のターニングポイントを迎えて主人公は一気に道が開けてきます。仲間が戻ってきたり準備が完了したりして急展開して加速していきます。いよいよ決戦のときです。(伸るか反るか)
フィナーレ この決戦は日本などの3幕構成で言うところの第3幕にあたります。ブレイクスナイダーはフィナーレという用語を使っています。このフィナーレでいよいよ敵を追い詰め勝利します。いわゆるクライマックスです。作品の勝負所でもあります。
ファイナル・イメージ 映画というのはたいていの場合、2時間以上はありますので、「勝ってそれで終わり」というわけではなく、観客に余韻を残す時間が与えられています。ファイナルイメージを観客に焼き付けて幕を閉じます。
このようなことが説明されています。
読んでみて
多くの映画やドラマがこのような構造になっていると思います。
利用する場合は、まずはこうしたものは暗記をして、逆にシナリオなどを書くときには、あまり構造を考えずに書き、「書いたらそのようになった。」というくらいに消化しておけばいいのではないかと思いました。
やはり面白くて「構成などという概念は頭に思い浮かばない」というような作品がいい作品なのかなと思います。
ブレイクスナイダーは、主人公の「心の傷」。これを非常に重要視しています。「心の傷があり」、「それが表に出て治る」。そのカタルシスが大事だということです。
ブレイクスナイダーはこれを延々と訴えています。
自分の感想としては
「心の傷」、それは非常に大事でこの本のテーマですが、見落としがちなのは、やはり作品である以上は「お楽しみ」(観客が喜ぶ売り)が重要だなというのが感想です。そして「お楽しみ」は「見つけるのがなかなか難しい」というのが私の感想です。
何をしてもどうしても結局クリシェになってしまいそうな気がするんです。
※ちょっと別の本の感想が混ざっているかもしれません。
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